医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.20 サイトメガロウイルス感染

院長から一言

先日、テレビで「さいとう」と言う名字の漢字には沢山あるが、そのほとんどの漢字が明治時代に名字をつける事になった際の役所の人の書き間違いが原因と言っていました。例えば「斉藤」の「斉」と言う漢字は名字で使われる以外「さい」と読まないのもその証拠だそうです。ところで学生時代に授業で聞いた話ですが、実は医学の領域でも間違いからスタートした検査があるそうです。それは心臓の冠動脈(心臓に栄養を送っている血管)の造影検査です。冠動脈が詰まったら狭心症や心筋梗塞になってしまうので昔は冠動脈に造影剤を流してはいけないと信じられていました。ところが、あるお医者さんが心臓カテーテル検査の際に間違って冠動脈にカテーテルの先が入ってしまったことに気づかずに造影剤を流してしまったそうです。一瞬びっくりはしたものの患者様には何も起こらず、それから冠動脈に造影剤を流しても大丈夫なことがわかったそうです。その間違いのお陰で、現在では狭心症の人に手術せずカテーテルで冠動脈を広げる処置までできるようになってきています。医学にはこの話のように以前より当たり前と信じられていたことが実は違っていたと言うことは今でも時々あります。一例として手術の際の手洗いの仕方があります。私が医者になった頃は手術の際の手洗いは堅いブラシでしっかり3回洗うことと教わりました。しかし、その後、堅いブラシは逆に医師の手に細かい傷を作り、その傷から他の患者様に感染を広げる可能性があるので、堅いブラシは使わないことと変更になりました。そして、その後はブラシの手洗いは3回中最初の1回で良いことになり、最近ではブラシを使う必要はないのではないかということまで言われています。何の領域でも当たり前と思われていたことが、実はちょっとしたきっかけや間違いから見直してみると以前の常識が全く変わってしまったりすることもあるのです。だから常に新しい情報を取り入れていくことが特に医療では大切なんですね。

最近の話題-サイトメガロウイルス感染

サイトメガロウイルス、サクマタブックの中にも簡単にお書きしていますが、妊娠中にお母さんに感染すると胎児にも影響を出しかねない、注意しなければならない感染症のひとつです。このウイルス感染は以前は妊娠する前から抗体(免疫)をもっている方が多かったのであまり問題にされていませんでしたが、最近では衛生の環境の改善に伴って、免疫をもっている妊婦さんの割合が減少してきているため、このウイルス感染による胎児異常の報告も多くなってきています。このウイルスはワクチンがありません。また典型的な症状は少なく、一般的には風邪のような症状ですので、症状から疑うことは難しいことが多い疾患です。そこで、その感染予防に大切になるのがやはり手洗いです。妊婦さんはとにかくまめに手洗いはして下さい。必ず手首まで洗うようにして特に指の間、指先はウイルスが多く潜んでいるので良く洗う必要があります。このウイルスは子供にも感染することが多いので、経産婦さんでは上のお子さんが熱を出した時などは特に注意して下さい。上のお子さんがお熱をだしたら、ご心配かと思いますが、なるべく上のお子さんの看病は他の方にお願いして、どうしても、ご自身で看病しなければならない場合は、看病の間はお子さんと接したらその後必ず手洗いをして下さい。上のお子さんにキスしたり、お母さんの口でお熱を確かめたりもしないで下さい。ご飯をあげる時もお子さんの食べ残しを食べたり、お子さんの使ったスプーンやフォークを自分の口に入れたりしても駄目です。上のお子さんを小児科の先生に診ていただく時も、その付き添いはできれば他のご家族の方にお願いしましょう。小児科の先生には必ずお母さんが妊娠していることを伝えていただき、もし小児科の先生からサイトメガロやそれ以外にもお腹の赤ちゃんにも注意しなければいけないウイルス感染を疑うと聞いたら、必ずクリニックに連絡をして下さい。場合によりお母さんが免疫をもっているか、感染していないかの確認の検査が必要になります。2歳未満の子供は一度サイトメガロウイルスに感染すると2年間近く唾液や尿中にウイルスを排泄する可能性があるとされているので、経産婦さんではいずれにしても、手洗いは普段から心がけるようにしましょう。

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