医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.28 妊娠中の体重の増えない食事の摂り方

妊娠中の体重の増えない食事の摂り方

妊娠中の体重増加は妊婦健診の時に確認させて頂く大切な項目の一つです。昔は妊娠中の体重は増えなければ増えないほど良いと考えられていましたが、最近では母体の適切な栄養摂取や体重増加は赤ちゃんの発達、将来の成人病の予防のためにも大切であることがわかっています。したがって、体重が増えないようにやみくもに食事を我慢するのはよくありません。しかし、一般的に皆さんが妊娠中に苦労するのは体重の増えすぎの方ではないでしょうか。普段とそんなに食事は変わっていない、いやむしろお腹が大きくなってあまり食べられなくなっているのに体重がどんどん増えていく、そんな風に悩んでいる妊婦さんは意外と多いと思います。その原因は妊娠中の独特の代謝に関係があります。妊娠中はインスリンという血糖を調節するホルモンの変動が激しくなっているとされています。インスリンは空腹時には血糖値が下がらないように分泌が抑えられ、食事で炭水化物・糖質が摂取されると分泌して血糖値を下げる働きをしています。血糖値が上がるとインスリンが筋肉や肝臓に糖分を取り込むように働き血糖値を下げ一定値に保っていきます。取り込まれた血糖はその時に筋肉や臓器で使わない分は肝臓などに取り込まれ、余りは脂肪などに作り替えられ身体に蓄積します。したがって一般的にこのインスリンの変動をなるべく少なくすることが太らないようにするためには重要となります。ところが妊婦さんは先ほども書いたようにこのインスリンの分泌の変動が大変大きくなっています。また妊娠中はなるべく赤ちゃんに糖分を移行させようとする反応が働くため、筋肉や臓器もこのインスリンに対する反応を悪くし糖分を取り込みにくくしています。このため今まで通りの食事をしているのに体重は増えていくということが起きたり、妊娠中にだけ糖尿病になる妊娠糖尿病などの病気になったりする人が出てきます。と言っても妊娠中は適切な食事は大切で、むしろ妊娠中は赤ちゃんのために標準の栄養摂取量に加え、妊娠負荷量を加えて食事をするように厚生労働省なども言っています。この妊娠負荷量を考慮すると妊娠前BMIが20前後だった人は妊娠後期には1日2000kcal程度の食事が必要になる計算になります。妊娠中は太りやすい体質になっているのに栄養をしっかり摂って太らないようにする、なんか矛盾していますよね。この矛盾を解決するのは食べ方にあります。まずは血糖値の急激な上昇を避けるような食事をすることが大切になります。その方法は炭水化物を少なくすること。そしてお腹が空いている時にいきなり炭水化物を食べないことが重要になります。炭水化物は直接インスリンの分泌を刺激します。しかも空腹時に抑えられているインスリンが摂取された炭水化物によって一気に分泌されてきます。一般的なダイエットでもロカボダイエットなどと言って炭水化物制限のダイエットが最近ブームになっていますよね。しかし炭水化物制限のし過ぎは一般のダイエットでも危険と言われています。したがって妊婦さんもある程度の炭水化物摂取は必要ですが、食事の時はまず、炭水化物という食べ方は避けた方が良いと思います。また、炭水化物を食べる時も線維の多い食材、脂肪やたんぱく質を一緒に摂ることも大切と言われています。したがって、体重が増えるのを気にして、食事を我慢してお腹がすごくすいたから梅干しのおにぎりならカロリーが低いだろうなんて考えて、それだけ食べると返って太りやすくなるという事になるわけです。インスリンの分泌の変動をなるべく少なくするにはまずお腹の空きすぎを作らない、食事を分けて摂る「分食」に心がけること、食事はまず野菜などから食べて炭水化物は最後に食べる、炭水化物だけの食事は避ける(例えばスパゲッティを食べるなら一緒にサラダを作り、まずサラダから食べて、スパゲッティの種類も具の多いものを選ぶ)などの工夫が必要になります。そして食後は少しでも筋肉に糖分を消費してもらうように少し散歩なんかするのも良いと思います。したがって寝際の炭水化物は危険ですので、夜ご飯の炭水化物は控えめにしましょう。このような注意を少しするだけで栄養もしっかり摂れて体重もそんなに増えないことが可能になると思います。参考にされて下さい。

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