医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.7 母体血による出生前診断

院長からの一言

ダイエットから2カ月、お陰様でリバウンドもなく過ごせています。さて、ダイエットと並んで時々皆さんから受けるのが「何で産婦人科医になったのですか?」という質問。そこで今回はその話をします。私は大学6年間障害者のお子さんのボランティアをしていました。そのボランティア活動を通し、「この子達の障害を減らしてあげる治療をしたい」と学生時代思っていました。そこで、最初は脳内科、脳外科医になろうと考えていましたが、当時は未熟児で生まれる事が障害の大きなリスクの時代でしたので、次第に未熟児治療をする小児科医になろうと考えが変わりました。そして当時の順天堂新生児科の教授に相談に行きました。するとその先生からNICUで「馬鹿もーん!」と一喝され、「この子達を治療しようと思っているなら、このような未熟児が生まれないような治療をしろ!」と言われてしまいました。この一言が私を産科医に進ませた最も大きな理由です。その後、病気のある赤ちゃんは胎児期に診断、治療をしてあげて、早期の治療で障害を減らしてあげたいと考え、超音波も専門にしていきました。この新生児科の教授は現在定年退職されていますが、今でも親しくさせていただいて、私の大切な恩師のひとりになっています。

母体血による出生前診断

先日、母体血よりダウン症候群の診断ができる方法が昭和大学と国立成育医療センターで導入が検討されていることが報道されました。そこで、この検査について少し説明をします。この検査は今から20年位前から研究が開始されてきました。昔から母体の血液中には僅かながら胎児血が入ってきていることがわかっていました。それをうまく母体血から分離できれば母体の血を採取するだけで、胎児の染色体の検査ができるのではないかということで研究がされてきました。今回話題になっている検査はようやくこれができるようになったのでいよいよ臨床に導入されようとしています。ダウン症候群を例に取ってもう少し詳しくお話しします。ダウン症候群は21番目の染色体が3本あり通常の染色体より1本多くなっています。すると胎児にダウン症候群があればその細胞の染色体に含まれるDNA量は僅かながら母体のDNA量より多くなっていることになります。このDNA量の重さの違いを利用し異常の染色体細胞を母体血中より分離していきます。母体は染色体正常であるはずなので、その細胞の21番染色体が3本あることを確認すれば胎児がダウン症候群である可能性が高いという判断になります。お解りいただけるでしょうか?しかし、この方法は倫理的にもまだ解決されていない部分があり、また例えこの検査で胎児診断されても現在は確定診断のためには羊水検査は必要と考えられています。今後まだまだ検討しなければならない問題は沢山含まれている検査なので、両病院とも一般の方に検査を行うことは暫く見合わせる予定だそうです。

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