vol.12 妊娠子宮の大きさ・子宮頚癌予防ワクチン
院長からの一言
本文中にもご紹介いたしましたが、当院のホームページがリニューアルされました。是非ご覧ください。今回のホームページのトップページの写真は桜の花にいたしました。これは私が撮影しました写真です。実は私はちょっとしたカメラ小僧でして、桜や紅葉の季節になりますと、大きなカメラグッズのキャリアバックを引きずり、三脚を担ぎ写真撮影に出かけています。外来にお気に入りの作品でも飾ればと言ってくれた職員もいるのですが、おこがましく今まで皆様にお披露目しておりませんでした。しかし今回のホームページリニューアルの際に師長、事務長の勧めもあり、今年の4月福島県で撮影した桜の写真を使わせていただきました。やや桜も終わりかけの時期だったので少し桜の花がまばらだったのですが、かえって花の形が良く分かり良かったように思えます。是非皆さんのご感想をお聞かせ下さい。
サクマタ産科ワンポイント解説(妊娠子宮の大きさ)
妊娠して子宮はどんどん大きくなりますよね!妊娠20週頃になるとだいぶ目立って大きくなってきます。なんで子宮はこんなに大きくなるのでしょう!前回も書きましたが子宮はただの筋肉で子宮はモルモンも一切出していません。妊娠する前の子宮の大きさはどのくらいかご存じでしょうか?赤ちゃんが入る子宮体部は妊娠前ではおおよそにわとりの卵くらいの大きさしかありません。それが妊娠して分娩直前になるとお母さんのおへその上まで大きくなります。こんなに大きくなるのは妊娠すると胎盤から出るホルモンの影響で子宮の筋肉の中の血管がどんどん網目状にひろがり、子宮全体に血液を蓄え易い状態にして、子宮が柔らかい状態になるからです。つまり血液をたっぷり含んだスポンジのようになる訳です。そのように柔らかくなった子宮の中で赤ちゃんは大きくなっていきますので、子宮も引き延ばされ大きくなり赤ちゃんもすくすくと育っていくわけです。したがってこの血液が蓄えにくい状態になると赤ちゃんは育ちにくくなります。血液が蓄えにくい状態には以下のような状態があげられます。①子宮が収縮する:子宮が収縮するということはスポンジを絞っているのと同じことですから、頻回にお腹が張る方は子宮に蓄えられる血液が減ることになります。②血管が詰まる:子宮の中の血管は大変細いので詰まり易くなっています。妊娠中に軽く貧血になっていくのも、血液をサラサラにして固まりにくくする妊娠の反応です。膠原病などと言われる一部の内科の病気や妊娠高血圧症候群などを合併すると血液は固まり安くなります。③血管が縮まる:タバコなどを吸っていると血管自身が収縮して血液の流れが悪くなります。また、やはり膠原病や妊娠高血圧症候群では血管は収縮し易くなることがわかっています。
読んでいただいてわかるように赤ちゃんの発育には子宮への血流は大切ですので、胎児ドックでは毎回子宮動脈の血流を調べてお母さんが子宮や胎盤に十分血液を送れているか調べています。ちなみに、毎回妊婦健診で測っている子宮底の大きさですが、大まかに言って妊娠月数x 3(+3)が正常とされています。例えば妊娠24週の人は妊娠7カ月になります(妊娠月数の計算は妊娠週数を4で割ってその答え(余りは無視します)に1足します)。したがって、この週数子宮底の正常は7x3=21cmからそれに+3した24cm位が正常となるわけです。参考にして下さい。
最近の話題(子宮頚癌予防ワクチン)
子宮頚癌予防ワクチンが定期接種となりましたが、一部心配な副作用も報告されています。これは打った後に疼痛が持続し、ひどいと全身に広がり場合により神経障害を起こすというものです。一部の方でこの予防接種の後重篤な合併症が起きた方が報告されているので、現在厚生労働省では十分な検討結果がでるまで、このワクチンの中学生、高校生への接種についてはメリットデメリットを良く考えてご両親で決定していただくこととしています。
現在、子宮頚癌はウイルス感染によって起こることが分かっていますので、このワクチンが将来の子宮頚癌発症の大きな予防策になることは広く認められ、WHOでも接種を推奨しています。前述の重篤な持続的疼痛や神経障害(急性散在性脳脊髄炎)は約430万人に1人と言われています。副作用についてのご質問がある方は遠慮なく医師にご相談いただき、接種につきまして正しい理解をしていただいた上で接種を行うか判断していただくことをお勧めいたします。