医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.13 母乳と乳児の脳発達・黄疸の秘密

院長からの一言

あまちゃんでブームになった「じぇじぇじぇ!」って方言、皆さんも御存じかと思います。方言があるのはなかなか風情があって良いものです。よく関西と下町の言葉も方言の比較で例えにだされますが、産科の世界でも実は関西と関東では違いがあるものがあります。それは会陰切開の向きです。会陰切開は右側、正中、左側と入れる方向に種類があります。これが不思議なことに関西では主に右切開、関東は左切開が多い傾向があります(あくまで傾向です)。その原因は定かではありませんが、どうも大学の教育によるもののようで関西の大学では主に右側切開で、関東の大学は左側切開で切開を入れるように教育されているようです。それぞれに選ぶ理由があるのですが、こんなことにも地域差があるのは面白いものです。ちなみに当院はほとんど会陰切開を行わないのですが、必要な場合は正中がほとんどです。

最近の話題(母乳と乳児の脳発達)

母乳が乳児の脳の発達に良いことがアメリカのブラウン大学から最近発表になりました。この発表では生後10カ月から4歳までの133人の脳の成長に関してMRIを使って調べたところ、2歳までに3カ月以上母乳だけで育てられた小児はミルクを使って育てた小児に比べ言語、情報機能、思考能力に関わる脳の重要な部分での発達レベルが高かったそうです。また1年以上母乳で育てられた小児は運動能力を制御する領域での成長が有意に大きかったことも報告しています。
この研究結果が正しいかは更なる研究が必要ですが、母乳が様々な面で良いことは今までの研究でも報告はされています。ミルクを使うことが間違っているわけでも、赤ちゃんに悪いということでもありませんので、心配しないでミルクは使っていただいて良いと思いますが、できるだけ母乳をあげることは大切なようです。良いおっぱいをあげるために妊娠中からおっぱいのことで相談がある場合は遠慮なく助産師外来でお尋ね下さい。

サクマタ産科ワンポイント解説(黄疸の秘密)

どんな赤ちゃんでも生まれると必ず起こるのが黄疸です。この黄疸どうして起きるのか、今回はこの点について解説をします。黄疸の原因となっているのがビリルビンという物質です。ビリルビンは血液の酸素を運んでいる赤血球が壊れると血液中に増えてきます。胎児期は胎盤から酸素をもらっているので、胎児は非常に酸素の少ない状態で生きています。したがって、胎内では酸素をつけやすい状態の赤血球で血液が作られています。生まれると肺を使って呼吸を始めるので、酸素がとても沢山血液中に取り込むことができるようになってきます。したがって胎内で使っていた赤血球がいらなくなるので、肺呼吸に適した赤血球に作りかえられていきます。この古い赤血球を壊すことによって発生したビリルビンが黄疸の原因となります。では、どうして黄疸が強くなり過ぎると治療しなければならないか?このビリルビンは脂肪に良く溶ける性質をもっています。生まれたばかりの赤ちゃんは体の水分の比率が高く、脂肪分が大変少なくなっています。最も脂肪をもっている臓器が脳です。このため、あまり黄疸が強くなると脳にどんどんビリルビンがくっついてしまい、赤ちゃんに障害を残す心配が出て来てしまいます。したがって、ある一定の基準以上の黄疸では治療が必要になってきます。黄疸が強くなりすぎると光線療法と言われる治療が行われます。これはただ、赤ちゃんを光に当てるだけの治療です。つまり日光浴みたいなもので赤ちゃんにはほとんど心配のない治療です。この治療は昔イギリスで看護婦さんが窓際にいる赤ちゃんの方がお部屋の奥にいる赤ちゃんより黄疸の程度が軽いことに気づき開始された治療と言われています。
黄疸のもう一つの原因として母乳性黄疸というのがあります。母乳だけで育てられた赤ちゃんは黄疸が長引くことがわかっています。しかし、この母乳性黄疸は治療の必要はなく、赤ちゃんにも悪影響を与えないことがわかっています。やはり母乳は不思議ですね!

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