vol.14 常位胎盤早期剥離
院長からの一言
ここのところイクメンという言葉を良く聞きます。当クリニックも夫立会出産率が約70%と高いのも、育児へ積極的に関わっていこうとするご主人が多い現れかもしれませんね!さて、私は大学勤務時代2年間英国に留学をしていました。今から約15年前のことですが、英国留学中イクメンなどという事が話題にされることはほとんどありませんでした。それは英国男性にとって育児に積極的なのは当たり前だからです。子供の送り迎えのために会社を遅刻早退するなんて、日本人では「何それ?」って感じですが、結構普通な感じでした。私事でも英国らしい経験をしました。冬のある日、私が実験中にある忘れ物をしたことを思い出し、家内に実験室まで届け物をしてもらうことにしました。ところが、家内が来た時ちょうど実験から手が離せず、廊下で当時10カ月位の次男を抱いた家内を少し待たせてしまいました。待たせたのは15分位でしたが、ボスが突然実験室に入ってきて「奥さんと小さな子供を寒い廊下で待たせて何をしている!」ときつく叱られてしまいました。つまりイギリスではイクメンと言うより子供を大切にすることが社会全体として定着していると言うことなんですね。子供の行方不明事件などがあると日本では1,2度テレビで報道されると見つかっても、見つからなくても追加報道もなく忘れ去られてしまいますが、英国では見つかるまでテレビで定期的にまだ見つかってないことが報道されます。日本でも単なるブームではなく、子供をもっともっと大切にするような社会になっていってくれれば良いですね。
サクマタ産科ワンポイント解説(常位胎盤早期剥離)
常位胎盤早期剥離、聞きなれない病名と思います。サクマタブックにも少し解説は書いていますが、起こると大変怖い病気ですので、今回はこの病気について少し解説をしておきます。この病気は簡単に言うとお腹の中にまだ赤ちゃんが入っている間に突然胎盤が剥がれてしまう病気です。お母さんは突然子宮の中に出血をしますので、子宮の中の圧が突然高くなり激烈な腹痛とともにものすごく子宮が硬くなります。したがって、この子宮の硬さは陣痛とは違って急に痛くなり余り痛くない時がありません。性器出血は起こることがありますが、起こらないこともあります。赤ちゃんにしてみれば胎盤が剥がれてしまったのでお母さんからの酸素が来なくなり、急激に重症な仮死になり、手当が遅れると死亡してしまいます。したがって、例え助かっても障害が残ってしまうことも多く、発症してからは一刻も早い治療が重要となります。先ほど書いた症状は典型的でありますが、実はその前触れ(前兆)がある人がいます。それが胎動減少と排便しても変わらない下痢のようなシクシクとした腹痛です。したがって、これらの症状がある時は、典型的な症状でなくても必ずクリニックに電話して下さい。この病気の確実な予防方法はありませんが、リスクの高い人はいます。タバコを吸っている妊婦さん、赤ちゃんの育ちが悪い妊婦さん、子宮筋腫をもっている妊婦さんなどです。したがって、タバコを吸わないようにする(できれば旦那さんも止めましょう!)のは当然ですが、それ以外のリスクのある人は他の方以上にこれらの症状には注意をして下さい。なお、一般的に破水、陣痛では救急車は使えませんが、激烈な腹痛があった時だけは救急車を要請できるので、一刻も早くクリニックを受診するようにして下さい。
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