医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.19 妊婦や新生児の腸内細菌

院長から一言

ここ1,2年私は地元の開進第3中学校からご依頼いただき、命の大切さについて講演をしています。今年も先月、この3月に卒業した中学3年生を対象に講演をしてきました。講演は無理なダイエットはしてはいけないことやお互いの性を尊重していくこと、妊娠が成立して出産にいたることが如何に神秘的で女性にとっては大変な事かなどを話しています。毎年初めのうち男子生徒さんなどは「産婦人科医の話なんて自分には関係ない」という雰囲気ですが、話が始まるとみんな居眠りすることなく一生懸命聴いてくれています。そして最後に全ての生徒さんが感想を書いてくれて、これを後日先生が毎年届けて下さるのですが、そこには「自分がここに元気でいられるのも両親のお陰であることが良く分かった」、「自分が元気で生まれてこれたのは奇跡に近いことだと言うことがわかった。自分を大切にしていきたいと思う」、「女の人を大切にしていかなければいけないと思った」、「両親に感謝したい」などの素直な反応を毎年書いてもらえるので、私にとって大変やりがいのある講演のひとつとなっています。中学生は多感な年ごろと言われますが、この時期に大人がちゃんと性や命について話してあげることは大切なことだと痛感しています。話が変りますが、当院ではご出産いただいた方にプレゼントとしてオリジナル絵本を差し上げています。この絵本の内容も表現こそ違え、生まれてきたことを大切するということを将来お子さんにわかってもらいたいという当院のスタッフの気持ちを込めて作成し、差し上げているつもりです。開院にあたり「子供向けにしてはちょっと内容が難しいのでプレゼントとしてあげるのはどうか?」とスタッフと悩んだ事を思い出しますが、皆様からの本の感想をいただいくと、これに決めて良かったと今でも思っております。これからご出産の方は是非楽しみしていただき、ご感想を教えて下さい。

最近の話題ー妊婦や新生児の腸内細菌

テレビで乳酸菌サプリメントの宣伝は良く見ますね。でも乳酸菌って何で良いかご存じですか?「お通じに良い!」、そんなイメージしかお持ちになっていないのではないでしょうか?確かにお通じに良いことは間違いありませんが、最近は腸内細菌にはもっと様々な役割があることが解ってきています。その中で最も注目されているのは免疫との関係です。腸は食べ物を吸収する場所なので、腸内の細菌や十分分解されていない栄養素が体内に入るのを防がないといけません。しかし、腸の粘膜は皮膚と違い、吸収の役割があるので大変デリケートな構造になっています。したがって粘膜の物理的なブロックだけではこの防御は不十分になります。そこで、腸の壁には護衛兵みたいな免疫に関係した細胞が沢山集まっています。乳酸菌はこれらの細胞が元気に働くお手伝いをしているのです。しかし、腸内は菌が居座れる席の数は限られています。しかも一度その席にある菌が座るとなかなか空けてくれません。したがって、乳酸菌製剤やサプリメントは一度や二度飲んでも腸の中に定着することができずに出ていってしまうので、腸の細菌叢(そう)を改善させるためには長期間服用しなければいけません。また腸は乳酸菌さえいれば良いわけでなく、大腸菌や他の菌とのバランスが大切とされています。しかも乳酸菌は沢山の種類があり、その人その人にとって良い乳酸菌の種類が違うとされているので、何を食べたり飲んだりするのが良いか判断が難しいという問題もあります。いずれにしても、この腸内細菌のバランスが良くなり腸内の免疫が活性されると体の主要な免疫組織も活性化される可能性があることが最近わかってきました(ホーミング現象)。妊婦さんでは乳腺の免疫も活性化されて生後の母乳の免疫機能が高まる可能性も指摘されています。結果的にその母乳を飲んだ赤ちゃんの腸内の免疫も活性化され、赤ちゃんのアトピーの予防にもなるのではないかと期待されています。まだまだ研究段階の話で医学的にきちんと証明はされてはいませんが、注目される研究ではあります。そこで当院でも妊娠中から乳酸菌を積極的に取ることをお勧めし、免疫に良いとされる乳酸菌を集めたサプリメントをご案内しております。上のお子さんがアトピーで大変だったなどの経験のある方には特にお勧めをしています。勿論、普段より発酵食品を含めたバランスの良い食事をすることが何より大切になります。なお、赤ちゃんは生まれた直後はその腸には細菌はいません。先ほどお話した腸の中の細菌の椅子取りゲームは生まれた後に赤ちゃんが口にするものから始まります。赤ちゃんの腸内細菌叢(そう)を整えてあげるためにも初乳はとても大切になるというわけです。

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