医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.5 トキソプラズマ感染症

院長からの一言

先日、日本超音波学会に参加をしてきました。今年は超音波学会設立50年だそうです。つまり、超音波が臨床導入されてわずか50年ということです。実はこの超音波、最初は医療機械として開発されたのではなく、魚群探知機として開発されています。これを臨床応用できないかと最初に考えたのが順天堂大学の大先輩の先生方で、その一人が私の超音波の師匠の教授です。魚群探知機のメーカーに最初に訪れた時は「先生方は釣りが趣味ですか?」と医者の道楽な趣味としか思われなかった様です。それからの苦労は想像を絶するもので、最初は風呂桶のような物に人か入り、その見え方を研究したと聞いています。それが今ではご存じの通りの高性能に代わっています。実はこの技術革新は工学を研究している先生方の協力があってのことで、医学の進歩は医者だけの力では無理な証拠です。今後も様々な分野で医療の発展はあって欲しいと思いますし、私自身も努力しなければと思っております。ところで、努力と言えば師長にダイエットの事をばらされたので、次号以降で詳しくご報告します。

トキソプラズマ感染症

先日、とあるテレビ番組でトキソプラズマ感染症についての報道があったようで、最近ご質問をよく受けます。そこで今回はトキソプラズマ感染症について少し解説をしておきます。簡単な内容はサクマタブックにも簡単に書いてはあります。ご参考にされて下さい。トキソプラズマは原虫と言って微生物学的に言うとウイルスや細菌より大きいサイズになります。人畜共通感染症と言って、猫の糞などに存在することが多く、また寄生した生肉などを摂取すると人に発病することがある感染症です。感染が起きると倦怠感、筋肉痛、発熱、リンパ節が腫れるなどの感冒様症状を起こすことがありますが、時に顕性感染と言って無症状の場合もあります。妊娠中の感染で問題になるのが、胎児への影響で、最悪は胎児に水頭症、眼の網膜炎、精神発達障害といった怖い病気を発症します。しかし、妊娠中の母体感染で必ず赤ちゃんに後遺症が出るかと言うとそういう訳ではありません。胎児への感染は妊娠14週以前で5~10%程度、後期で50~60%程度と言われています。しかも胎児に感染しても全部の赤ちゃんに後遺症がでるわけでなく、妊娠後期の感染では赤ちゃんに後遺症はほとんど起きないとされています。現在の日本の衛生状況では食用の生肉を触ったくらいではトキソプラズマ感染にかかる心配はしなくて良いと思いますが、念のため生肉の食べることはなるべく避けた方が良いとは思います。いずれにしろ極めて稀ではあるので当院では全員の妊婦さんに検査をしていません。御心配な方は検査をご相談下さい。

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