医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.32 赤ちゃんの日焼け止め

赤ちゃんの日焼け止め

1か月健診でお母さんから「赤ちゃんに日焼け止めは塗ってあげてよいですか?」という質問をよく受けます。最近の強い日差しを考えると赤ちゃんの弱い皮膚に紫外線は大丈夫か心配になりますよね。しかし、当院では赤ちゃんに日焼け止めを使用することはあまりお勧めしていません。それは適度に日光にあたることは赤ちゃんの骨の代謝に大変大切だからです。
ビタミンの中にはビタミンDという骨の代謝に大切なビタミンがあります。このビタミンDは食事から吸収されますが、それよりも日光(紫外線)にあたることによって皮膚で作られることの方が多いビタミンです。このビタミンDは腸からのカルシムの吸収を助ける役割をしていますから、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が少なくなり、骨が弱くなることがわってしまいます。
もう一つ考えなければいけないのが母乳の特性です。母乳はたくさんのメリットがありますが、欠点もないわけではありません。欠点の一つにビタミンDが人工乳に比べて少ないことが挙げられます。したがって、おっぱいからしか栄養を摂っていない生後まもない赤ちゃんに「紫外線に当てては大変」などと考えて、外出時に日焼け止めを常に塗っていると赤ちゃんの皮膚でビタミンDが作られなくなり、赤ちゃんがますますビタミンD不足になり骨を弱くしていく可能性が出てきます。カルシムの吸収不足が進むとO脚になったり、骨折し易くなったりするリスクも高くなります。したがって、外出時に帽子や日よけなどを利用して直射日光を避けてあげることは大切ですが、日焼け止めを赤ちゃんの露出している皮膚に塗るはやめた方がよいかと思います。
ここまでのお話をすると母乳はいけないのではと思われる方もいるかと思います。確かに人工乳にはビタミンDが添加されていますからビタミンD不足になる可能性は少なくなりますが、母乳には沢山のメリットがあるので赤ちゃんの骨が弱くなることを心配して母乳をやめる必要や完全母乳のお母さんがあえて混合哺乳に変える必要はありません。しかしお母さんがご自身の食事でビタミンDの多い食事を積極的に摂ることや(ビタミンDはお魚(ぶり、鮭、シラス、いわしなど)、きのこ類(特に干しいたけ)などに多く含まれます)、お母さん自身も過度に日焼け止めを塗って紫外線を徹底的に避けるようなことをしないことは大切です。また、当院では1か月健診時に赤ちゃん用のビタミンDサプリメントなどもご紹介しています。完全母乳のお母さんはこのようなサプリメントを利用されるのもよいかと思います。なお、母乳中には鉄分も少ないという特性もあります。ご出産を終えても鉄分をしっかり食事で摂ることも意識してください。

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