医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.22 スマホが育児に及ぼす影響

院長から一言

妊娠中に良質の蛋白質を摂ることはとても大切なことです。妊娠中の蛋白源としてはお肉よりは魚をなるべく摂るようにした方が良いのですが、魚は魚で注意しなければいけないことがあります。それは大きな魚や深いところにいる魚には水銀が多く含まれているという点です。具体的にはまぐろ、カジキマグロ、金目鯛などが身近な魚です。さて、ではなぜこれらの魚には水銀が多く含まれているか疑問に思った人はいませんか?私も以前より気になっていました。知り合いの息子さんが大学で水産学を勉強している方がいて、先日お会する機会があり聞いてみました。すると、実にスマートなお答えをいただきました。それは食物連鎖と関係があるとのことでした。多くの魚は自分より小さな魚を餌としています。つまり一番小さな魚はプランクトンを食べ、その魚を少し大きな魚が食べてという形で食物連鎖が成り立っています。自然界には若干の水銀があり魚もそれを摂取していますから、沢山の魚の食物連鎖の上にいる大きな魚では大きくなればなるほどより水銀が体内に蓄積され易くなるとのことでした。したがって、草食性の魚には水銀はほとんど無いそうです。代表的な魚はぼらです。しかしぼらは美味しくない魚ですから卵以外あまり私達は食べませんよね(卵はからすみになります)。また、深いところにいる魚は光が届きにくい海で生活していますので海藻も少なく、草食性の魚を餌として食べる機会も減りますから、より水銀も蓄積しやすくなるとのことでした。でもこれらの魚も食べてはいけないわけではないので、魚は量と種類を考えながらなるべく沢山食べるようにしていきましょう。厚生労働省のHPにも書いてあるので参考にして下さい。

最近の話題-スマホが育児に及ぼす影響

先日「乳幼児期における母子の愛着形成と脳の発達過程 ━スマホが及ぼす影響について━」と言う興味深い内容を研修で学んで来たので少しご紹介いたします。スマホが母子の愛着形成と脳の発達過程においてどのように影響を及ぼすかといったテーマです。現代の生活では欠かせないスマホではありますが、逆に子供から大人までネット依存が高い傾向であることも懸念されています。子育て中の母親もついコミュニケーションツールとしてスマホに依存しがちになっている人も多いようです。しかし、何気なくスマホを繰りながらの育児を行っていると次の2つの悪影響が懸念されるようです。1つ目は母親の子供への愛着形成への悪影響、2つ目は乳児がスマホアプリで子守されることへの悪影響です。

乳幼児期の脳の発達過程という難しい話になりますが、愛着の基礎形成というものは最初の生後3か月間が、大切な時期になります。この時期にしっかりと抱擁し、声をかけてあげて、目を見つめながら優しく育児されることで乳児は安心感を深め愛着の基礎が培われていきます。さらに悲しい、嬉しい、怖いなどの感情の発達には1歳半から2歳くらいまでの感受期といわれる時期が大切になります。不安や訴えに対して適切に母親が対応することで母児の愛着の絆を結ぶことができます。また、この同時期には視覚と言語の感受性発達も育っていきます。したがって、この時期にスマホを繰りながらの育児を行うと母親が子供の要求に添うことが出来なくなることが多くなり、結果的に子供が安心感を得られなくなります。母親もそのような子供に対して泣いている理由がわからない、子供の要求がわからないといったことが起こり、我が子を愛おしいと思えなくなり、愛着に歪みが生じてくる可能性が出てきます。例えば子供が泣いている時にアプリをついあやし道具として与えるとします。子供がすぐに泣きやむと母親は確かに楽になりますが、これを繰り返すと母親は何故泣いているのかを探ろうとしなくなってしまいます。前述のように泣き声を聞き分けた母親自身の対応で乳児が泣き止むといった経験を積まないと、母親にわが子を愛おしいと思う感情が育たなくなる可能性が出てきます。また、子供が悪い事をした時に、安易にスマホを与えて、子供の気をそらす形で注意を行うと、子供は悪い事の意味が理解できず、母親も叱り方を学習しなくなってしまいます。子供の感受性発達の大事な時期は、スマホを見ることよりも、しっかりと子供を見つめて、抱いてあげる、声かけをいっぱいしてあげること、それが子供が何をしたいか、どうして欲しいかを解ってあげることにつながりますから、当たり前ですがこれらの母親の行動はとても大切なことになります。

次にスマホアプリが乳児に与える影響についてです。母親から十分な愛着行動をもらえず、スマホからの一方的な画面を見せられていると乳児の感情発達にも歪みが生じる可能性が指摘されています。子供は大好きなお母さんの顔、優しい声、抱っこは視覚や行動を予知する能力の発達にとっても大事になります。先ほど述べたように生後から2歳頃までは脳の発達に特に大切な時期と言えます。子供は母親と健全な愛着関係を積み重ねながら人と関わる共感性を学習し、対人関係の基礎を形成していきます。育児は大変なので便利なものについ頼りがちではありますが、じっくりと育児に取り組む時間の大切さを考えさせられます。(師長 岩下 智恵)

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