医療法人 順桜会 桜台マタニティクリニック

vol.25 臍帯血バンク

最近の話題―臍帯血バンク

今回は臍帯血バンクについてお話しします。臍帯血バンクには公的臍帯血バンクと私的(プライベート)臍帯血バンクの2つがあります。公的臍帯血バンクは登録施設でボランティアとして協力頂ける妊婦さんに分娩時に臍帯血を採血させていただいて、これを白血病などで困っている方の骨髄移植に利用させていただくというものです。一方、私的臍帯血バンクとは患者様が業者と契約をして生れた赤ちゃんが将来、もしそのお子さんが再生医療の可能な病気にかかった時に利用できるように分娩時の臍帯血をそのお子さん用として保存しておくシステムです。これを行っている会社は数社あるのですが、その内の経営破たんをきたした会社が、保存していた臍帯血を無認可の医療機関に横流しをして、その医療機関で保存を依頼していた患者様とは全く別の患者様の美容等のために利用していたというのが今回話題になっている問題です。このことは以下の点で問題となります。まず、現在臍帯血を用いた治療はまだ確立されていないので、一部の病気の治療にしか認められていないということ、そしてその治療も限られた施設でしか行えないということです。どちらも厚生労働省の厳しい審査を受けた結果、条件付きで認可されます。今回の問題はこの両方とも守られていない、全くもって言語道断の話です。


この私的臍帯血バンクについてもう少しお話しをしておきます。臍帯血の中には幹細胞と言われる全ての細胞に分化しうる細胞が含まれています。臍帯血を利用した治療はこの幹細胞を治療に利用します。しかし現在この臍帯血の治療で唯一確立しているのは白血病などの血液疾患に対する骨髄移植だけで、これは前述したように公的臍帯血バンクが中心に行っています。私的臍帯血バンクの会社はこの白血病などの治療の他にも将来応用可能な再生医療の対象となる疾患への備えとして臍帯血を保存しておくと患者様に説明していますが、この点は十分な理解が必要となります。血液疾患以外で現在臍帯血を用いた再生医療は実際にいくつかの病気で行われていますが、現在日本で行われている病気は脳性麻痺や重度の新生児仮死のお子さんに対する治療と高度自閉症に対する治療だけです。しかし、この治療も一部の大学病院で始まったばかりです。将来的にはとても良い治療になる可能性はありますが、残念ながら、今お腹の中の赤ちゃんがもしこれらの病気にかかった場合、臍帯血を保存しておければスムーズに治療に利用できる状況かと言えば、必ずしもそうではないのが現状です。前述のように治療できる施設の制限、治療対象となる患者様の制限などがあるからです。一般的に臍帯血は10年間の保存が可能であるとのことなのでその間に医療が進歩し、これらの治療ができる施設や対象患者様が広がる可能性は十分ありますが、この臍帯血保存、治療の発想は約20年前から始まり、現在でも前述の通りの現状であることは十分考えていかなければなりません。費用は各社により差はあるかと思いますが一般的には20万円以上が必要になりますので、利用を考えている患者様は十分これらの点を考慮して検討いただいた方が良いかと思います。なお、当院では私的臍帯血バンクの採血は行っておりません。希望の場合は行っている施設にご紹介させていますので、遠慮なく相談下さい。

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